今活躍している選手に話を聞いて彼らに利用してもらえる場にしてもらいたい――「闘会議2018」のステージイベント「JeSU 闘会議発表会」をレポート

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2月10日(土)と11日、千葉県・幕張メッセでゲームファンとゲーム大会の祭典「闘会議2018」が開催された。その戦陣を切る形で、初日のレッドステージで10時半より行われたのが「JeSU 闘会議発表会」である。

この「JeSU」とは、今年の2月1日(木)に設立されたeスポーツの団体「一般社団法人日本eスポーツ連合」の略称だ。

これまでバラバラに活動してきた「一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSPA)」「一般社団法人e-sports促進機構」「一般社団法人日本eスポーツ連盟(JeSF)」の3団体を統合。それを、各ゲームメーカーが加盟している「一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)」と「一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)」が後押しする形で誕生している。

会長はセガゲームスの取締役である岡村秀樹氏、副会長は元ファミ通の編集長でGzブレインの代表である浜村弘一氏が務め、理事としてカプコンやコナミ、ガンホーの面々がわきを固めるという、どちらかというとゲームメーカー寄りの布陣となっている。

そうしたことや、認定タイトルにスマホゲームが選ばれるなど世界のeスポーツの現状とは大きく乖離していることから、やや否定的な意見がもたれることが多い団体である。

何はともあれ、当事者たちはどう考えているのか。多くの人がオープンな場でその生の声が聞ける貴重な機会となったのが、この「JeSU 闘会議発表会」だ。

司会を務めるバロン山崎氏の紹介で、ゲストのJeSUの岡村秀樹氏と浜村弘一氏が登壇した。

▲写真左・岡村秀樹氏、写真右・浜村弘一氏。

「プロライセンス」を3つに分けた理由は?

――プロライセンスは3種類ありますが、それぞれについてご紹介していただけますか?

浜村氏:まず「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」。これが一番普及するものだと思いますが、15歳以上の方で義務教育課程を修了している方ということになっています。賞金を取っていって、どんどんゲーマーとして収入を得ていって、頑張ってもらいたいなと思いますので、まずこれがプロライセンスのひとつです。

これは15歳以上ですが、ゲームは動体視力が問われます。中学生ぐらいからやってもらいたいというのがありますので、下の年齢の方も取れるようにしたのが「ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンス」です。これは13歳以上、15歳未満に向けて発行させてもらっています。

こちらは大きな賞金などには対応していませんが、賞品を出すという形で頑張っていただけるかなと思っています。

あともうひとつは「ジャパン・eスポーツ・チームライセンス」ですね。ゲームによっては、4人とか5人のチームとしてやっていくものがあります。場合によっては、コーチや入れ替えなどもあったりします。こちらは、法人格を持っているところである程度の実績のある方を、IPフォルダーが推薦していただければ承認するという形で、チームライセンスを発行しています。

――3つに分けたのは、何か大きな理由があるのですか?

浜村氏:「プロライセンス」と「ジュニアライセンス」は年齢で分けているのですが、ゲームの形式として控えの選手も必要な場合があったりするので、形式によってわけたのと年齢によって分けたものの2軸ですね。

――ジュニアは将来はライセンスプレイヤーになるという形ですか?

浜村氏:15歳になって、親御さんのご承認が必要ですが取ることができたら、更新していただいてプロライセンスに変えていくこともできます。

――今回のプロライセンスの発行を受けて、ライセンス認定大会以外の出場ができなくなるという意見があります。今までコミュニティでやっていた活動に、制約がかかるんじゃないかと心配をされている方もいます。実際はいかがでしょうか?

浜村氏:それはぜんぜんありえないですね。元々なんでこんなライセンスを作ったかというと、ゲームプレイヤーの方々にスターになっていただきたい。活躍の場所をいっぱい作っていただきたいというところから始めています。

その環境を整備するために作りましたが、当然のことながら活躍の場を増やすためにやっているので、今までやってきたコミュニティの場を制限するようなことはありえないですね。

――アシストして幅を広げていくといったイメージですかね。

浜村氏:まさにその通りですね。なかなかできなかったことが、できる場を作るということで、ライセンスを作っています。

岡村氏:IPフォルダからきちんと許諾を受けてやってらっしゃるコミュニティの実績を認めたうえで、ぜひ我々の団体としてeスポーツ全体の盛り上がりをサポートしていきたいです。これは精神的なものも含めてですね。規制のための団体ではありません。

浜村氏:選択の幅がどんどん広がっていく形になると思います。

認定のタイトルについて

――認定のタイトルですが、現在6つあります。今後増えていく予定はありますか?

浜村氏:どんどん増えますね。いろんなジャンルのゲームからお問い合わせを頂いています。30~40社ぐらい来ていただいて、話を聞きたいと。しかも日本だけではなく海外からも来ています。これからすでにもう、いくつか大会が決まっています。

岡村氏:初ライセンスのこの場に間に合わなかったのかという話でいうと、タイミングの問題があります。たまたまタイミングが合わなかったという、IPフォルダもたくさんいます。我々はこうした大会を、ほかの機会も設けてやっていきたいと思っています。さらに増えていくと思っています。

浜村氏:おそらく、皆さんが期待してらっしゃるタイトルがなんでないんだろうと思われるものもおそらく出てくると思いますし、ライセンスを作って場を増やすことができたら、認知度も上がってくると思います。

このチャンスに、eスポーツに興味があったんだけどこういう現象が起きるならうちの会社もやってみたいなという意見も出てくると思います。今から開発して出てくるアプリやPCゲーム、コンシューマーゲームというのも、どんどん増えていくという風に考えていいと思います。

――これから増えていくというのは、現状あるタイトル以外にということですか?

浜村氏:そうです。例えば人気のキャラクターやシリーズでやりたかったんだけど、ウケるかどうかわからないという相談も受けています。そういうライセンス制度があるなら、うちも思い切ってやってみようかなとおっしゃってるところも増えています。それもある意味、プロライセンスが始まるひとつの効果だと思います。

――認定の基準はありますか?

浜村氏:競技性がないものは、eスポーツになりませんね。ある程度勝負がつかないとダメだと思うので、勝敗が付くのは大前提です。例えばリアルタイムアタック(RTA)で、何かのモンスターを早く倒したりというものもあると思います。アクションゲームでも、どれぐらい早く解けるかという競技として競えるものがあるとしたら、それを僕らはeスポーツだと認定していきたいなと思っています。

幅を広げたいと思っているので、なにかしらのeスポーツの提案があれば競技として成立するものなら、採用していきたいという風に考えています。

岡村氏:eスポーツに適用するようなタイトルを、作ろうかどうか迷っているパブリッシャーやIPフォルダーさんが結構いらっしゃいます。環境が整備されていることによって、お金と時間と自分の会社のリソースをかけてタイトルを作っていく後押しのようなものが、間違いなくあると思います。

その意味では、スキル性の高いそういうジャンルのタイトルがアイデアを含めて出てくると思います。ゲーム産業という視点でみると、起爆剤になってくるんじゃないかなと思います。

――今まで対戦するようなものは作ってなかったけど、違うものを沢山作っているので見たことのない競技性のあるものが出てくるかもしないですね。

岡村氏:可能性はあると思いますね。今日作り始めて明日できるわけではないですから(笑)。

浜村氏:昔すごく人気があったけど最近出てない対戦ものとかに、「出さない?」と働きかけていることもあります。そういったものも、出てくるんじゃないかなと期待しています。

――新旧を含めて楽しみですね、今後が。

浜村氏:非常に期待しております。

eスポーツはオリンピックの正式種目になるのか?

――気になっているのは、オリンピックだと思います。ニュースなどでも話題になっていますが、2018年のアジア競技大会ではデモンストレーションで、2020年のアジア競技大会ではメダル競技として採用されます。eスポーツがオリンピックの正式種目になる可能性についてお聞きしたいのですが。

浜村氏:これはIOC(国際オリンピック委員会)のバッハさんに聞いてもらうのが一番なんですけど(笑)。ジャカルタのアジア大会。これは間近に迫っています。今まで日本から代表を送る素地がなかったんです。ぜひ、そこにチャレンジしてみたいなと思っています。

詳細はまだ届いていませんが、日本は優良なアジア競技大会のメンバー国なので、そこに向けて努力をしていきたいなと思っています。

アジア競技大会やすべてのスポーツは、ある種の歴史を積み重ねてオリンピックの競技種目になって、何もないところからぽこんとなるのは、はやりあまりありません。オリンピックそのもののエキシビジョンであったり、アジア競技大会といようなところで採用されて、なおかつ競技実績が整っているものとなってくると、IOCのほうが競技種目をチョイスします。大きな材料になるんじゃないかと思っています。

実は今、世界各国の我々と同じような団体がいくつかあります。そうしたところはすにで、IOCに働きかけをしています。日本は今まで組織的に働きかけをしてきませんでした。というか、そういう環境がなかったのでできなかったんです。

今回これで整っていくんだとするならば、そこに向けて頑張っていきたいと思います。東京オリンピックはもう難しいだろうと思いますが、それ以降のオリンピックの正式種目になっていく可能性は十分にあると思っています。

eスポーツというジャンルがきちんと整備された形で、eスポーツをやらない人から見ても極めて透明、公正な形で競技が行われているように見えるのが重要です。そうしたことがきっと、IOCはむろんのことJOCも見たうえで、判断していくんだろうなと思っています。
我々の立場からすれば当事者ですが、正式種目に採用されるように他国とも連携して頑張っていかないといけないなと思っています。大変だとは思いますけどね(笑)。

とりあえず足下のところでいえば、ジャカルタのアジア競技大会にできれば日本選手団を派遣したいなと思っています。

浜村氏:種目はまだ明確になっていませんが、7つか8つぐらいゲームが採用されるという話が、漏れ聞こえてきます。

岡村氏:国際大会になると、チョイスされるタイトルが日本のものとは限りません。海外のタイトルの選手登録をしていただいて日本代表として送り出すというのも重要ですが、できれば国際大会のタイトルに他国の異議を挟まれることなくチョイスされるようなものが生まれてくるというのが重要なんです。

いいタイトルはたくさんあります。競争しているのは選手だけではなく、ゲーム業界全体が作っているものがある種世界と競り合っていかないと思っています。

ゲーム大国と言われていますが、そういうところで採用されて初めて「ゲーム大国とだよね」ていう話になるんじゃないかなと思います。

浜村氏:日本の開発能力はすごくて、RPGは海外で生まれましたが、もはや日本のほうが素晴らしいクォリティのものをいっぱい作っています。eスポーツは、それほどまだ日本では市場ができていませんでした。これからライセンス制ができたことで注目されはじめて、新たなタイトルができて世界中で普及したら、それこそ6年後、10年後に日本製のeスポーツタイトルが世界で普及するというのも十分あると思います。

JOCへの加盟がJeSUにとっての大きなステップアップ

――JeSUとしては、今後どんな活動に注力されていきますか?

岡村氏:活動としては、JeSU的にも今日(2月10日)が第1歩です。これ以降、できればなるべく早めに条件を整えて、JOCへの加盟を申請していきたいと思っています。

今回の連合の設立の主旨のひとつに、日本のゲーム産業あるいはゲームの社会的ステータスを上げていきたいというのがあります。もうひとつは、世界的にスポーツとして認められているeスポーツに、早くキャッチアップしていかなくてはなりません。我々は立ち上がりが遅かったので。

そういう意味では、JOCへの加盟はひとつの大きなステップアップだと思っています。このような大会を定期的に開催するということも含めて、情報発信をしっかりとしていきたいと思っています。

海外の大きなeスポーツの団体がいくつもあり、今後どうやって連携をしていくか話し合っていきます。各国で大会が開かれていますが、今までは個人の資格でいってました。そういうところへ、選手を交流の一環として派遣して、選手の活躍する場にサポートしていくというようなことを大きな柱にしていくことで実績を積み上げていきたいと思っています。

浜村氏:やっぱり選手が活躍しないことには、大きくならないのでそこをサポートしていかなければならない団体だと思っています。なので、そういった活躍の場をどんどん作っていきたいと思っています。

今活躍されているプロの方々にとっては、こうしたライセンスがなくても海外に行って賞金を稼いで協賛を集めてと、全然必要ないものかもしれません。でも、その下の世代の若い人たちにとっては、タイトルの幅が広がれば活躍する場ができ、少しずつ自分を輝かせることが見つけられます。なので、利用してもらいたいし使ってもらいたいです。

僕らが団体を作りましたが、まだ選手との交流がしっかりできているとは思っていません。もちろん今まで通り活躍していただきたいのと、どうやったら選手がもっと活躍できるのか聞いて、彼らに利用してもらえる場になりたいなと思っています。

――JeSUとしてはどんな扉をこじ開けていきますか?

岡村氏:JeSUそのものができたばかりですし、これからまだまだブラッシュアップしていかなければなりません。選手をはじめとした、いろんな方とのコムニケーションが必要です。このeスポーツを、日本で多くの人に認められたジャンルとして確率していくのが、山であり扉であると思います。

団体そのものの完成度をもっと高めて、選手に育ってもらう環境をいかに整えるか。主催者からすれば、安心してアスリート大会を開催できる。そういう環境を、ひとつひとつの整備に力を尽くしていきたいなと思っています。

浜村氏:僕はメディアで、ゲームの会社やクリエイター、絵を描かれる方や音楽を作られる方に取材をし、それが特集になったりというようなことを今までやってきました。ここから先は、選手が主役になるフェーズがくると思っています。ゲームをプレイする方に取材をする。どうやったらここまでこれたのかなど、みんながすごいなと思う時代がくると思います。そういう時代の扉を開けられたら、すごく嬉しいなと思いますね。

――最後にメッセージをお願いします。

岡村氏:できたばかりの団体です。私たちは日本のeスポーツをしっかりと確立していくということに向けて、ぜひ皆さんのご支援とご理解を頂いて、力を結集してやらせてもらいたいなと思っています。

この団体の特色は、世界に例を見ないIPフォルダのほとんどの賛同を頂いて、それもeスポーツの事業そのものを推進してきた団体の皆さんと、大同団結して作ったものです。

アスリートの皆さんにしっかりとご理解を頂いて、新しい選手の方を育成していくということが重要なので、一瞬力を貸していただきたいなと思っています。

浜村氏:ぜひ力をかして、一緒に力を合わせて、選手も一緒に大きくしていきたいと思いますし、IPフォルダと一緒に力を付けていきたいなと思います。

――ありがとうございました。

この「闘会議2018」では、2日間で賞金総額2,815万円、46人8チームにプロライセンスが発行された。今後様々な議論も起こっていくだろうが、まずは最初に一歩を踏み出したといった感じだ。

JAEPO × 闘会議2018概要


開催日程:2018年2月10日(土)10:00~18:00 / 2月11日(日)10:00~17:00
※2月9日(金)は「JAEPO2018」業者商談日
会場:幕張メッセ国際展示場1~8ホール(うち2、3ホール:JAEPO)
公式サイト:http://tokaigi.jp/2018/

会場来場者数:7万2,425人(昨年「JAEPO×闘会議 2017」会場来場者数:6万8,459人
ネット総来場者数:513万1,820人(昨年「JAEPO×闘会議 2017」ネット来場者数:412万6,180人)
※ネット総来場者数は、ニコニコ生放送、OPENREC、YouTube Live、ペリスコープの合計(主催調べ)。

■JeSU公式サイト
https://jesu.or.jp/

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